午後のカフェの窓際に座っていると、いつもより少しだけ時間がゆっくり流れている気がします。
あたたかいコーヒーを手に、そっと考え事を始めました。
ブランドとは何だろう。
どれだけ言葉を整えても、ビジュアルを磨いても、最後に人の心に残るのは、そこに流れる「空気」のようなものだと思います。
それは数字や理屈では測れない、でも確かに存在するもの。
私はそれを、エネルギーと呼んでいます。
英語の“Energy”という言葉には、胸の奥にふっと火が灯るような温度があります。
情熱や高揚感、声に出さなくても伝わる優しい熱。
一方で、日本語の「エネルギー」にはもう少し理屈っぽい響きがあって、電気や燃料のように目に見えないパワーをため込んで循環させるイメージがあります。
どちらが正しいというわけではなく、その両方が重なって初めて、ブランドにしなやかな呼吸が生まれるのだと思います。
私が好きな小説と映画に、**『冷静と情熱のあいだ』**という作品があります。
あのタイトルの美しさは、まさにブランディングの本質を表している気がします。
いつ、どの場面で、どんな熱を見せるのか。
どんな相手に、どれくらいの静けさを手渡すのか。
感情をただ一方的にぶつけるのではなく、そのときにふさわしい温度を見極めること。
熱と冷静のあいだで揺れながら、自分らしいリズムを見つけることが、ブランドにとっていちばん大事なことだと感じています。
少し前に聴いたポッドキャストで、心に残った言葉がありました。
Emma Gredeの「Aspire」という番組で、Jefferson Fisherがこんなふうに話していたのです。
「息は最初の言葉だ。」
言葉を口にする前に、一度だけ深く息を吸う。
その一呼吸が、会話のトーンを決める。
落ち着いたエネルギーが相手に伝わり、安心感を生む。
私はその瞬間、頭の中で何度もうなずいていました。
ブランドの発信も同じだと思ったからです。
SNSでも、メールでも、打ち合わせでも、最初に感じるのは理屈ではなく、その人がまとっている気配。
何を言うかより、どんな状態でそれを言うかが大切だと改めて感じました。
Emma Gredeは、SkimsやGood Americanの共同創業者として知られるロンドン出身の起業家です。
ブランドをゼロから育て、世界中の人に愛される存在にしてきた彼女の言葉は、どこか飾らず、正直で、勇気をくれるものでした。
オーストラリアで仕事をしていて、少しもったいないと感じることがあります。
本当に素敵なサービスや商品があるのに、「返事をしない」「感謝を伝えない」だけで信頼が薄れてしまう場面をたくさん見てきました。
エネルギーを循環させることは、特別なスキルではありません。
ただ、相手の声に応えること、心をこめて返すこと。
それだけで、ブランドの体温が変わる。
そしてその体温は、言葉より先に相手の心に届くものだと思います。
E is for エネルギー。
それは完璧な情熱でも、ただの冷静でもなく、そのあいだを行き来しながら一番自然な形で伝わるもの。
息を整え、心を整え、今の自分のリズムを大切にすること。
それがきっと、ブランドに深い魅力を宿す方法です。
思索のための問い
パーソナルブランドについて
今の自分には、どんなエネルギーが静かに流れているだろう?
この在り方は、今ここにいる自分にちゃんと馴染んでいるだろうか?
ビジネスブランドについて
私のブランドは、その本当の物語や、今の成長の姿を映せているだろうか?
「こう見られたい」と思うあまり、どこかで無理をしていないだろうか?
もし、今ここにある自然なエネルギーを信じてみたら、どんな景色が見えるだろう?
最後にもうひとつ、私が好きな英語のブランドクラフティングの言葉を紹介したいと思います。
E is for ..... EXTRA.
「あなたってちょっとExtraだよね。」 面と向かって、あるいは陰で、そう言われることがあります。
でも私は、それを悪いことだとは思いません。
むしろ、それこそが自分のエネルギーだと感じています。
声が大きいこと、リアクションが大きいこと、楽しいと思ったら全力でやってしまうこと。
全部、心から毎日を味わいたいという気持ちの表れです。
人生は短い。
だからこそ、ちょっとExtraくらいがちょうどいい。
遠慮しなくていい。
突き抜けていい。
打たれやすい釘でも、それがあなたらしさなら誇りにしてほしい。